期間
平成17年5月8日(日)~平成17年5月22日(日)
派遣先国
オマーン、イエメン、サウジアラビア
派遣専門家山本 英雄・山田 繁樹・安住 敏克・信川 貴洋
5月8日(日)成田発と関西国際空港発に分かれて出発し途中バンコクで合流し約15時間かけて最初の訪問国オマーンに到着した。
オマーンに到着しての第一印象は湿度が高く非常に蒸し暑く感じたことと、空港から一歩外へ出るとターバンを巻いた人達を多数目にし、イスラムの国に指導に来たということを実感した。
5月9日(月)いよいよ事業を開始であるが、初めに大使館で現地大使を表敬訪問しその後、現地連盟の方々と夕方より行われる演武会の打ち合わせをした。また現地警察等を視察した。オマーンの警察では、護身術として空手道が取り入れられておりたくさんの警察官が訓練に取り組んでいる姿を拝見し、改めて空手道の護身術としての必要性、重要性を再認識した。

 夕刻より行われた演武会は、現地大使夫妻出席のもと現地連盟の指導者約30名、空手愛好家100名程度と、在留邦人や見学者合わせて約300名の観客の下、ラスハムラ・リクリェーションセンターにおいて開催された。 また、訪問期間中はオマーン空手普及25周年記念にあたり、日本週間が実施されており日本関連啓発備品の展示等も同センターにおいて行われており日本とオマーンの友好関係についても目にすることができた。

演武内容については各流派による形の演武、試割り、約束組手等を演武させていただき、大使夫妻はじめ空手関係者や観客の人達よりたくさんの拍手をいただき、改めて空手道のすばらしさを肌で感じていただいた瞬間であった。
5月10日(火)午前より現地指導者に対する指導、午後からは学生、児童に対する指導を行い、現地では松涛館流が主流であるが現地の方々は、上半身の力にたよった空手になっている姿が目に付き、各先生方との打ち合わせにより下半身に重点を置いた基本、移動の練習を中心に行いその後、指導者には指定形「ジオン」の順序と分解、学生等には基本形を指導したが、形のポイントをひとつでも吸収しようと熱心に形の練習に取り組んでいたのが大変印象的であった。

その夜、大使公邸において、夕食会が開催され、現地空手関係者や大使館職員の方々と友好を深めた。
5月11日(水)深夜、第二の訪問国イエメンに向い、オマーンでの事業は2日間という非常に短い時間であったが大変充実した2日間であった。

イエメンは、標高2300メートルの高地にあるため、オマーンに比べて涼しく感じた。

最初の事業は現地スポーツ大臣に対しての表敬訪問に始まり、5月12(木)に行われる空手デモンストレーションの打ち合わせとイエメン協会側のデモンストレーションのための指導を行う。イエメンでの空手道の印象は、オマーンと同様に基本がおろそかになっているように感じた。
5月12日(木)朝10時よりイエメン空手協会主催による空手公演が国立競技場ホールにおいて、約3000人の観客のなか開催された。公演内容は、イエメン側が基本動作や基本形を行い、その後日本側は各流派を代表する形の演武、試割り、居捕りを行った。

今回の公演は空手道を初めて目にする観客も多く、日本の代表的武道・文化芸術である空手道をイエメンの方々に紹介できたことが、今回の公演での一番の収穫であったと思う。
5月13日(金)指導者に対する指導では各州から招聘された指導者や選手約100名を3つのグループに分けて、各グループに松涛館流、剛柔流、糸東流の基本や動き方を紹介し、その後約束組手、指定形の指導を行った。


イエメンでの事業も3日間という短い時間であったが、公演の観客数が示すようにイエメン人が空手道に対して深い関心を持っていることについて理解できた。
また、イエメンは中東のなかでも近代化があまり進んでいないが、伝統的建築が残る世界遺産等を目にすることができるなど、中東らしさを実感できる国であったと思う。

その夜、中東らしさを実感しながら、第三の訪問国サウジアラビアのジェッダに向け出発した。

サウジアラビアはアラブ諸国の中でももっとも忠実、かつ厳格にイスラムの教えを守っている国であり、通関検査等も厳しくまた服装も制限されるなど不安を抱えたままサウジアラビアに到着した。サウジアラビアより香川先生の代役で山本先生が合流され4人での海外指導がスタートした。
5月14日(土)サウジアラビアでの最初の事業として、「ジェッダ」で指導者に対する指導を行った。

指導者を見ている時に気が付いたことは、オマーン、イエメンに比べて蹴り技が非常に多くヨーロッパスタイルが主流になっており、突きの指導をあまりしていなように感じられた。

いざ基本の練習を始めると、突きが急所を捕らえておらず、上半身だけの力に頼るなどの場面をよく目にした。そのため、先生方が下半身の重要性についての説明し実践を交えて突きの練習を繰り返した。
5月15日(日)午後よりナショナルチームへの指導の予定であったが、サウジアラビアでは日曜日は平日にあたり、また時間も2時からということで予定していた人数より少なめの人数での指導となった。指導内容は、指定形を中心に形の分解、約束組手を行った。形の分解については、間違えた解釈をしている者も多数見られたため、指導者や競技者にとっては有意義な練習であったと思う。

その後、19時頃より演武会が在ジェッダ領事館領事、サウジアラビア空手道連盟関係者、一般市民等約300名の観客の下開催された。演武内容はサウジアラビア連盟より要望があり各流派を代表する形と試割り、居捕りを披露することになった。サウジアラビアの観客は、オマーンやイエメンよりも熱狂的であり、演武後は記念撮影を申し出る観客も多かったように思う。

また、演武会後はサウジアラビア連盟の主催による食事会が行われ、サウジアラビアの伝統的食事スタイルを体験させていただくなど手厚い歓迎を受けた。
5月16日(月)ジェッダよりリヤドへの移動日。
5月17日(火)リヤドで指導を開始したが、リヤドでも指導日が平日のため予定よりも人数が少なめであった。リヤドでの指導内容は現地の要望もあり、指導者については、立ち方を始めとする基本稽古、形、(カンクウダイ、ジオン)、約束組手について指導を行った。選手に対しては組手を中心とした実戦的な指導を行った。
5月18日(水)・19日(木)階級別の全国大会が開催され大会を観戦したが、形選手については全体的に上半身に力が入りすぎる選手が多く、当地でも下半身が不安定な選手が多く見られた。

組手選手は、先に述べたようにサウジアラビアではヨーロッパスタイルの選手が多いため、全体的に蹴り技が中心で突きに関しては上段への攻撃が非常に多いため負傷者が多く出ていた。

各階級の決勝戦は選手のレベルも高く決勝戦ということもあり、大技を出す選手もいなく今までとは違い中段突きを主体とした組手に変化し、白熱した決勝戦にふさわしい試合であった。良い選手も何名か見受けられた。

また、試合を観戦しながら審判の動きを見ていて気がついたことは全体的に拳先をあまり見ておらず、タイミングだけで副審は旗を上げているように見えた。大会を客観的に観られたことで外国での選手のレベルやスタイル、さらに審判のレベル等を見学することができた良い機会であった。

大会期間中も大会の合間をぬって演武をさせていただいたのですが、演武を重ねるたびに慣れてスムースに演武ができ、試合と演武が一体となり心に残る大会となった。

本来ならば5月20日(金)、21日(土)はアラブ首長国連邦のドバイに滞在し、5月22日(日)にアフガニスタンのカブールに移動し5月25日(水)まで事業を行いその後5月27日(金)に帰国の予定であったが、移動の数日前に爆破テロや誘拐事件等が起きたため今回アフガニスタンへの派遣が急遽中止となり5月22日(日)の帰国となった。

本来ならば5月20日(金)、21日(土)はアラブ首長国連邦のドバイに滞在し、5月22日(日)にアフガニスタンのカブールに移動し5月25日(水)まで事業を行いその後5月27日(金)に帰国の予定であったが、移動の数日前に爆破テロや誘拐事件等が起きたため今回アフガニスタンへの派遣が急遽中止となり5月22日(日)の帰国となった。